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る所の士、重盛の爲に死を願ふ者、二百餘人あり。保元の亂に、源下野守、敕命を以て六條判官はんぐわんを斬りき。兒當時そのときに在りて、以て大逆無道、言ふに忍びざる者とせり。此れ大人親らる所に非ずや。忠ならんと欲すれば則孝ならず。孝ならんと欲すれば則忠ならず。重盛、進退、此にきはまる。生きて是うれひるより死するに若かず。大人必今日の擧を遂げんと欲せば、先づ重盛の首をねて、然る後發せよ」と。且言ひ、且泣く。坐を擧げて感動す。淸盛曰く、「淨海、衰老を以て此擧を爲すは、一身の爲に計るに非ず。たゞ子孫を慮るのみ。乃以て不可と爲さば、汝好く之を計れ」と。乃起ちて內に入る。