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を以て待賢門にき、大に呼びて戰を挑む。信賴おそれて馬よりつ。重盛門をはいして入り、大庭おほには椋樹むくのきの下に至り、義平義平よしひらと大に紫震殿ししんでんの前に戰ひ、七たび櫻橘樹あうきつじゆめぐり、出でゝ大宮巷に至り、弓をつゑつきて以ていこふ。平家貞之を目して曰く、「平將軍再び生ずと謂ふべし」と。重盛兵をへてまた入る、義平呼びて曰く、「我は源氏の嫡子ちやくし、公は平氏の嫡子なり。宜しく與に死を决すべし」と。重盛曰く、「諾哉よいかな」と。乃進み戰ひ且退く。二卒の景安、家泰と、共に走る。義平及び鎌田政家かまだまさいへ之を追ひて二條のほりに至る。重盛ほりゆ。政家之をて、肩及びつ。甲堅くして入らず。馬を射る。馬倒れてかぶと墜つ。政家之にせまる。重盛ふせぐに弓を以てし、冑を取りて之をかふむる。景安至り、政家をちてたふし、義平に殺さる。重盛怒りて親らたゝかはんと欲す。家泰進みて義平と相搏ち、政家に殺さる。重盛かんを得て走る。是時に當りて、賴盛等、郁芳門を攻め、義朝と戰ひて退き走る。義朝の卒に、善く走る者八町二郞あり。鐵搭てつたふを以て其冑にこうす。賴盛、刀を拔きて搭をる。二郞あふぎ仆る。賴盛走る。源氏の兵、宮を空くして出づ。