忠盛の子忠盛七子あり。淸盛、經盛、敎盛、家盛、賴盛、忠重、忠度と曰ふ。而して淸盛最寵貴を極む。祇園女御初め忠盛の白河上皇に事ふるや、上皇嬖姬あり。祇園祠の傍に居る。甞て夜幸するに雨ふること甚し。鬼の髮束鍼の如きを覩る。乍覩え、乍失す。忠盛に命じて之を射さしむ。忠盛捕へて之を視るに、一老僧の麥稈を束ねて以て笠に代へ、火器を提げて行く〳〵これを吹くなり。曰く、「將に燭を祠に上らんとするなり」と。上皇忠盛の膽勇倚るべしと、益寵あり。幸する所の宮人兵衛佐局、忠盛と私して身めり、上皇即之を賜ひて曰く、「女を生まば則朕之を取らん。即し男ならば、卿以て子とせよ」と。宮人免身して男を生む。淸盛是を淸盛となす。後更に妻を娶り、家盛、賴盛賴盛を生む。