んや。特(たゞ)積威の約する所を以て、抑(おさ)へて敢(あへ)て發せざりし耳。保元(ほうげん)平治の際に至りて、乃釁(きん)に乘じて起り、潰裂(くわいれつ)四出し、復收む可からず。橫流の極、終に其千歲不拔の權を失ひて、之を嚮(さき)に奴僕視せし所の者に授くるを致す。慨(なげ)くに勝(た)ふ可けんや。吾外史を作り、首(はじめ)に源平二氏を叙(じよ)するに、未だ甞て王家の自ら其權を失ひしを歎ぜずんばあらず。而れども國勢の推移する、人力の維持する所に非ざるものあり。世の變(へん)に因りて以て得失を見、後の世を憂ふる者、將(まさ)に以て心を此に留むること有るべきなり。