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幕末有志の士雲の如く起りて盛に勤王論國を唱へし者の中には先生のこの書を讀みて感奮せしもの幾人ぞいはゆる爲朝、重盛、義經、正成、信長、秀吉、家康の如きこの書に依りてその名を知りその事を知りしもの幾人ぞかくいふ余の如きも實にこの書に依りて我が武士道史を知りし一人なり

考證學派起りて此書の流行一度は衰へたりと雖も此書は素よりさる方の史には非ず一種の氣槪を本として詩の如く劇の如く書き綴りたる者なれば時勢は再この書の愛讀を促すに至れり蓋し未來永劫この書の世に忘らるゝ事は非ざらむ然れども今の靑年諸士の學問に多忙なる專ら力を漢文に注ぐこと能はざるが故にかく趣味津々たる此書も隔履搔痒の感なきもの蓋し少からざるべし是この邦文日本外史を譯述せし所以なり