星田に舍し、將軍は角南に舍す。
城中、我が大軍の至るを聞き、乃戰を議す。後藤基次、薄田兼相、渡部尙、出で
て平野平野に陣し、大野治長、眞田幸村、木村重成、長曾我部盛親、相繼ぎて出づ。
兵各萬餘人。我が前鋒を邀へ擊たんと計る。後藤基次基次夜に乘じ、甲を潜めて南す。勝
成、嶺頭に在り。諸︀將に謂て曰く、「炬火の北より來る者︀、道明寺に至りて滅す。
是れ敵の我が不意に出でんと欲するなり」と。乃備を嚴にして竢つ。而して使を
馳せて之を中軍に吿ぐ。直孝、高虎も亦、中軍に赴きて節︀度を取る。前將軍曰く
「事我が意の如し」と。六日昧爽、將軍と倶に發して、平岡に至る。勝成、直寄、
重正等を造して、道明寺口の戰道明寺に赴かしむ。基次に片山に遇ふ。重正、利あらず。直寄
進みて其橫を擊つ。重正之に反る。兼相、尙、來りて基次を救ふ。勝成、尙を擊
ちて之を破る。本多忠政、松平忠明、伊達氏の將片倉景綱と、基次、兼相を撃ち
て亦之を破る。大野治長、眞田幸村等、道明寺より二萬騎を以て援ひ至る。景綱
幸村と戰ひて利あらず。陸奥の銃隊之を承く。幸村郤く。是に於て、勝成、諸︀將
と齊しく進みて合擊す。荻又市伊達氏の銃手荻又市、基次を射て之を斃す。水野氏の騎
士河村新八河村新八、兼相を縱して亦之を斃す。本多、松平、丹羽︀氏、左右の翼を縱ちて