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邦文日本外史卷之二十二

德川氏正記

德川氏五

十九年
秀忠右大臣となる慶長十九年三月、大將軍、從一位に陛（のぼ）り、右大臣に遷る。天使就きて拜す。四月 天使、江戶より歸り、駿府（すんぷ）に過（よぎ）りて、內旨を諭し、前將軍を以て太政大臣と爲 【孫女】和子し、三宮（さんぐう）に准じゆんす。辭して敢て當（あた）らず。又孫女を納（い）れて中宮（ちうぐう）と爲さんことを諭（さと）す。 乃詔を奉ず。

大野治長是の時に當りて、豐臣秀賴（とよとみひでより）已に長じ、其臣大野治長（おほのはるなが）等、陰（ひそか）に兵を擧げて其舊業を 復せんことを謀る。治長、姿容（しよう）あり。密（ひそか）に淀君（よどぎみ）と通ず。言ふ所聽かれざる莫し。 織田長益淀君の季父（きふ）織田長益（ながます）と議して、書を前田利長（としなが）に遺（おく）りて曰く、「先君遺命（ゐめい）あり。君盍（なん） ぞ來りて嗣君を輔（たす）けざる。城內甲仗（かうぢやう）豐足（ほうそく）す。福島正則（まさのり）等の貯（たくは）へし所の穀粟（こくぞく）、積み て數萬石に至る。以て爲す有るに足る」と。利長、疾（やまひ）を以て之を辭す。其書を以 【兩府】駿府、江戶て來り、兩府に獻ず。五月、利長、卒（しゆつ）す。子利光（としみつ）に命じて封を襲（つ）がしむ。秀賴の