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Page:Gunshoruiju27.djvu/364

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かげにいひつれど。ほどもなくかへらせ給に。御つかひのかざしのあふひもすこしなよやかなり。かづらの葉もうちしぼみたる。なかいとえんにみえたり。御くるまのすぎさせたまふにほひよりはじめ。いだし車どものあふきから衣。あをくちばなるなども。いみじうなまめかしうぞみゆる。ざうしき所のしうのあを色に。しろき一かさねどもけしきばかりひきかけたるは。うの花のかきねにことならずみえて。ほとゝぎすもかげにかくれぬべくぞあめる。昨日はくるまひとつにあまたのりて。二あゐのなをし。さしぬき。あるはかりぎぬなどもみだれきてすだれをときおろし。物ぐるをしきまでたはれたりしきんだちのけふは院のゑかにとて。ひのそふぞくうるはしくして。くるまにもひとりづつのりたりしにおかしげなる殿上わらはなどばかりをのせたるもおかし。わたりはてさせたまふやをそきとなどかさしもまどふらん。まづわれさきにたたむとおそろしきまできほひさはぐを。かくないそぎそ。たゞのどかにとあふぎをさしいでてせいすれど。きゝもいれねばわりなくて。すこしもひろき所にとゞめさせたるを。いと心もとなくにくしと思ひたるけに。我ひとり心のどかにとおもへど。人はさも思はぬにやといとうたてあやうきこともありぬべければ。なをことかたよりとせめいひて。やらするみちはむげの山ざとのみちきていとあはれなり。うつぎのかきねをわけゆけば。枝どものいとあらしうおどろがましげにてさしいるをいそぎてとらへんとするに。いとゞとくぞすぎゆくやまた。はなすくなにはあれど。ひとしてすこしおらせて。あふひかづらのかればみたるがくちおしきに。さしくはへたる