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Page:Gunshoruiju27.djvu/350

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むこの心ち。われはとおぼゆかし。ごうつにかたきのむげにさばかりぞあらむと思ひころしえてをきたるいしを。かまへていけて。人のいしおほかるをころしえて。ひろひとりたる人の氣色もいみじうしたりがほなり。かたきはあさましとうちまもりていでなし。あしこにはいかでかあらむとてをしこぼちつる。たゞのませよりはねたからんと見えたり。

おぼつかなき物。十二年の山ごもりしたるほうしのめおや。やみなる夜しらぬ所にはじめてきたる。あないもしらねばにやとつゝましくて。火もえともさぬ。さすがに人はあまたゐなみたるほどこそおぼつかなけれ。又まいできたる下すなどの心もしらぬに。やんごとなきものなどもたせて。人のがりやりたる。をそく歸るほど。物いはぬ程のちごのにわかにおどろしうなきて。これいだくにもかれいだくにもいだかれず。そり返てなきたるこそ。いかなる事のあるにかとわりなくおぼつかなけれ。くらき所にていちごくひたる。

たとしへなき物。夏と冬と。よるとひると。かきくらし雨ふる日といみじうてりたる日と。人のわらふとはらだつと。おひたるとわかきと。しろきとくろきと。思ふ人とにくむ人と。おなじ人ながらも心ざしあるおりとかはりぬるおりとは。まことにこと人とこそおぼゆれ。火と水と。こえたるとやせたると。かみのながき人とみじかき人と。

身をかへたるとみゆる物。さるべき所にたゞにてさぶらふ人の御めのとになりたる。たゞの人のをばいふべきにぞあらぬ。ほかよりいままいりたるはさしもおぼえず。つねは我らがおなじ人と思ひならひたるに。やゝもすれば。から衣ひき