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といふ人漢の成帝をいさめし時。帝大に逆鱗ありて廷尉に仰付られ。朱雲をきられんとて引出さるゝ時。朱雲は出じとすまひし程に。取つきたる殿の檻をひきおりたり。是をのちに修理せんと申人ありしを。成帝はすべて修理すること有べからず。君のあやまり有時はかくこそいさめしものはあれと。後の人に見せてためしにせんとの給へり。あやまりまします時。いさめをいれざれば。國をも天下をもうしなふによりて。唐の太宗はいさめ申ものをことに賞し給へる也。侍從の官をば闕たるををぎ[な歟]ひ遺をひろふといひて。君のあやまりあり又わすれ給ふことをひそかにつげ申つかさ也。諫議大夫といふは今の宰相をいふ也。是はもはらいさめをつかさどる軄なり。昔よりかくのごとくいさめの事はなくてかなふまじき事にさだめられたる也。是は公私大小の差別こそあれ。一家のあるじたりといふともそれあやまりあらば。分々に其ひくはんにんたる人はいさむべき事なるべし。次に讒奏といふことはあさましき事に侍り。しろきをくろく。黑をば白きと申なす事。靑蠅の物をけがすにたとへ侍り。周の代に成王と申御門は周公旦とていみじき聖人にて國をおさめ侍りしを。管叔蔡叔といふあしきをとゝ二人ありて讒奏せられしかば。成王誠と覺しめして周公をしりぞけられき。其時雨風あらく。世のなかさはがしく。秋の田のみなども損じ侍りしうへ。成王の父武王の病し給ひし時。命にかはらんと周公のかき給へるちかひの言葉。金縢の書といふ物をもとめ出されて。これほどの忠有人なりけりとて。めしかへされて。讒奏したるをとゝ二人をば誅せられしかば。雨風もたちまちにやみ。田のみも