Page:Gunshoruiju27.djvu/181

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し人は朝夕ふみをつくるくせあるゆへに。心をくだきてわかくより鬢のかみしろしと詩にもつくられ侍りき。此おきなもそのかみよりなにとなくものをこのむくせのすベてなをり侍らぬは。われながらもどかしく覺ゆる也。代々のふるごと。やまともろこしの筆のすさび。源氏狹衣やうのものまでももてあそび侍ること。老のやまひともなり侍るベき也。されど空なる星をたらひの水にうつし。廣きわたつみを蛤の貝にてすくひ侍るほどの事だにはかばかしからねば。心の水淺きに任せてふかき旨をくみしることもなし。朝夕人のもてあそびとなれる三代集の中にだにいまだあきらめざる事は多く侍り。まして日本紀万葉集などは。いまだかなもなかりし世のえびす歌。國々の境談とて。いやしき民の言葉をもひろひあつめたる物なれば。よみとく事だにもかたかりしを。顯昭といひし人。日本紀の神代よりの歌の心をかきあらはし。仙覺といひしもの萬葉集のむねをえて三百餘首。順などだにもよみとかざる點をくはへ侍り。光源氏をば光行といひし田舍人。水原抄五十餘卷をつくりて昔よりの難義ども多くあかせり。これらの中にもひがごとまじれる事はあれど。數寄の心ざしは此世ひとつなとの事にあらず。佛神の御たすけによりて一道をさとりえたるとぞおぼえ侍る。是はいやしき輩なれども名をあらはし。かしこき御門の御前にめし出され。身にあまる御いつくしみをもかうぶり侍し也。八十二代八十七代院などの御代は。殊にはへばへしかりしかば。かやうのふるき道をもおこさせ給ひけるにこそ。此比承侍れば。歌よむ人の中にも萬葉は見ぬ事などと申すかたも侍るとかや。いとおぼつかなき事也。俊成定家爲家卿な