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く人はおぢおそれんずると。勝にのりて小事をとがめて威をふるはんとし。國の者共をも所從などの樣におもひなして振舞事あらば。後には能事あらんや。かへて耻に成べき企也。都近ければとて京のなま人にはし。僧や兒などに交遊などして。さしも智惠ふかき京人どもに。心ぎはをもみえしられて。することも云ことも何ばかりの事かあらんなど。さはぐりみえらる間敷也。武士は鬼神やらん何やらん。さこそふかき心中に案をこめて持たらめと。人にうとく思はれんのみこそ。君の御爲も彌然べけれ。返々も鎌倉殿御家人にて。久敷も又子どもの末まで續せんとおもはゞ。心を長くしてつゝしみてよかるべき。筋なき事仰たりとおもはで。此御文をよく見まいらせて。子共にも面々云をしへよとの仰にて候也。仍執達如件。

潤十二月廿八日

盛時奉

佐々木太郞左衞門尉殿


泰時御消息

近年在京の武士共。物を射るとて內野を馬場に定たるよし其聞え有。事實ならば代々皇居の跡也。馬の蹄にかけむ事恐あるべきよし內々御沙汰も候へば。一定仰出さるゝ道も候はぬと覺候。其上物詣の還車。若所詮なき人々。態とも車を立て見物もし候らんに。よしといはれべき事はせめて如何はせん。兒女房などに。關東武士の弓箭徒事也と笑沙汰せられんは。あやまりて上方の御耻ともいひつべければ。手の本もしらずかゝる晴わざをこのむ輩は不忠成べし。就中六波羅方より內野へ出んことは殊に然るべからず。若き者共に馬を馳させ弓をひかせ。我と腕をのされんと思は