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の。後悔ならぬ事はなし。土佐房。常陸房は僧の身ながらもうるさき剛の者なるによりて。さて土佐も命をまいらする上は。左右なき事なれ共今少はやり過てあぶなきかたのみえしにあはせて。九郞判官に討れにき。常陸は心しづまりたるにて。十郞藏人をもいみじくたばかりすましてからめ取て。思のごとく首をも切て奉き。もとより一人當千と云事は。一人して千人にはいかでか向べきなれども。はかりごとをよくし。居ながら多勢をはろぼす事を名付たる也。定綱は心も剛に故實もたけたり。舊武者にこそ有に。子共が何も千騎にぬけてかけ出んとみえたるは。心地よけれども猶もはやり過たるくせ者共にて有なんめれ。能々敎しづめて。御大事にも合べき也。波多野右馬丞が。世にさる者にて有しも。上總介が奉公深かりしも。惡きことありて御勘當ありき。かやうに御計有こそ御本意なれ。宮仕法師の故より事起りて。京より流されまいらせたること。見ぐるしく御面目なくて。公私の名折にはあらずや。只いちはやき咎一つより起たる也。定綱は宮仕も勳功も有がたく。御心安も思食ばこそ。かたへもあらそひし箭開の餠の二の口をも給て。他の人の恨をもおひたりしが。又近江の國をも預たびぬれば。就中件の國は都もちかく。聞る山三井寺もあれば。旁の狼藉向後とてもなからんや。能々案じてはからひて事をも過さず。さればとていふかひなくもせず。かまへてなさけ有て。國の者共にも親の樣におもひつかうるべし。物をとらず。人にもすかされずたゞしく行ならば。をのづから威勢と成て。人にも用られて。自然に國も治。法師ばらなどにも侮らるまじき也。わが身は國の撿非違使ぞかしとて。其事とな