Page:Gunshoruiju27.djvu/160

提供:Wikisource
このページは校正済みです

がひ候也。返々も鎌倉殿の御恩にて。無道の愁なげきもなく。邪の禍にもあはぬぞと。万の人に思はれたのまれんとおぼしめせ。左だにも候はゞ。別而御祈候はずとも。伊勢太神宮。八幡大菩薩。加茂。春日。皆々嬉しと思召。諸佛。諸聖。諸天善神。必々守まいらせさせ給べき也候べく候イ。大かたはイ佛法いまだ候はざりし時。天竺。震旦。日本國に各賢王聖主おはしまして。世間も目出度。一切諸人上下たのしく候き。君も寶祚長遠にて。百姓万民の父母とならせ給候き。則三皇五帝とて。堯舜の君も佛法以前の人にておはしまし候ぞかし。さ候へば。無量億刧にもあひがたき三寶にあひ奉らせ給得分には。只後生を祈て。三界の火宅を出。生死のくるしびとて。心うきめにくり返あひ候事をまぬかれて。佛果菩提にとくしてイいたらんとおもふ祈を。君も臣も心にかけさせ給べしとこそ覺候へ。此上の佛法も。外法も災を拂。福を可招事明に候。されば三國相傳して。其効驗も利益もなきにあらず。然ば先御身ををさめて。政を能々調て。其上に御祈候はゞ。響の音に應ずると申たとへのごとく。混柄ヒタエの鎚にて有べく候。さても近代の樣。人の作給イ。功德も祈も人目計にて候。眞實の底には。國の費人の歎のみにて候へば。佛も神もうけさせ給はず候也。佛神は偏に德と信とを納受して。物により財イを悅ばせ給はぬものことイと可知食にて候也。かやうの事の謂を御意得候て。武家を治。帝王の御守と成。諸人の依怙とならせ給候はゞ。聊もあしわろイく腹ぐろく思まいらせん者をば。日本國三世の敵にて候はんずれば。其身自然に可滅候。如此委樣をも申ひらかずして。蒙仰を悅として。御氣色をよからんとのみおもひて。佛神の御心をばかへりみおもはそれイず。たの