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Page:Gunshoruiju18.djvu/772

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までをくり給ふ。

 人そあるえやは又とも契りをかん老の行ゑのけふの分れは

やがて使にかへし。

 老のなみ立わかれて〈るとイ〉も出舟〈友イ〉のあふせをまたとたのめぬる哉

此返歌にそへて。たちな〈別イ〉れし人々の方へ。

 おもひ立し旅よりもうきかり枕あまたなれにし宿の別は

浦づたひして歸るとて。富士のけしきの面白をみて。

 たひならてみまくほしきは富士のねのはれ行波の月〈しらイ〉雪の空

是よりのぼり侍るに。藤枝長閑寺といふ所に善德寺いますほどに。立よりぬれば。和漢の一折興行。發句所望あれば。

 ゆきやらてはなや春まつ宿の梅  喜卜

 友三話歲寒  九英

 扣氷茶煎月  〈善德寺〉承芳

又是より遠江天芳道芝庵へかへりて年をこし侍るに。明年の二日子の日なれば。

 今日といへは野への小松のうら若みねの日に千世を引例哉

同七日に若菜の題にて會興行。

 なへて世のけふのわかなに言のはの慰め草や積りそふらん

十二月十八日の夜。於中御門一座御興行の發句申せと仰ければ。

 あけほのの雪のうへみむ山もなし

  月に色そふまつの寒けさ  中

 鳫かねもこほるあらしのさよ更て  藏

同廿三日の夜月待に。又一折。

 ふるゆきのつもるやとしの末の松  中

  山風さむみ峯のあさあけ  藏

 いる雲をわするゝ月の影すみて  喜卜

淸見が關にいたりてこれより奧へはゆかざりければ

 心よりこゝにさそはれ淸みかた關とめらるゝなみのあらかき

是より三保の松原をはるかにみをくりて。

 朝なきに蜑のをふねもほのとみほの松原波やこゆると

 ふる里に歸る心をとかむなよ錦にまさる墨の衣は

 しらしかし水の上行かつをむしわかあしふみにならふ心は

   右尊海僧正紀行以太田覃本挍合了