四方の山麓の塵に重ねてもをひ登るふしに較へやはせむ
こゝにきていよ〳〵高し都人みることかたき不二の高ねは
上をみむせめてことはの花もかな月と雪とのふしの詠に
ふしをみむと高き賴をかけ川や遠きわたりに今そきにける
たかくみしふしを都にかたるともさやは思はむさやの中山
郭公さよの中山なか空におよはぬふしのねをや鳴らん
定めをくもちのみ雪は遮莫けふまつきえぬふしの白雪
ふしのねは雪のいつくそ我にけふ忍ふの山の名をやかる覽
十三日。ひくまをたちてのぼりけるに。吉美妙立寺にて。あけぼのゝ富士。有明の月にさだかにみえ侍るに。
よこ雲の引まの里をへたてきて又たくひなきふしの曙
十
鹽見坂こゝろひかれし富士もみつ今は都とさしにこそさせ
こひの松原といふ所にしばしやすみて。
むかし誰戀の松はら待人のつれなき色に名つけそめけん
やはぎのさとを遙にみやりて。
ものゝふやおさむる國の軍みてやはきの里とこゝをいふ覽
十七日。又みづの右衞門大夫宿所に止宿侍り。やがて上洛のかくごにて侍れども。數日のきうくつを
朝蟬
旅にしてほすひもあらし薄く共蟬のは衣けさはかさなん
忍戀
さきにたつ淚のしらぬ戀ならはさすか心の色はみえしを
道のこと相傳し葛はかまなど着し侍しに。よみてつかはしける。
契るそよ君思ふより我もさは道
七月七日。關民部大夫宿所にて。人々題をさぐりて。
七夕枕
いはまくら今宵かはしてね一つのうしひき歸るあまの河波
惜月
なれぬれは人にもかゝる名殘そと更てかたふく月にしる哉