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かりみえ侍りければ。
板ひさし久しき名をは猶みせて關の戶さゝぬふはの中山
たる井と申所につき侍て。
里人もくみてしらすやけふ爱にたるゐの水の深き惠を
十二日。夜をこめて。あをのが原と申所を過るとて。
草のはの靑野か原もみえわかて夜ふかく分る露そ寒けき
赤坂と申所にて。いまだ夜も明侍らず。友なひ侍る人々も跡におくれ侍を。しばしまち侍しほどに。
行つれぬ友さへ跡に殘るよをしはしやこゝにあかさかの里
なか橋と申所を過侍るに。あたの田のもゝ遠く見わたされて。
秋ふかき田面に續くなか橋はほなみをかけて渡すとそみる
中川と申所にて。
都より流れ出ける末なれや今はた渡る中川のみつ
むすぶのまちやとかや申所にて。
朝露の結ふのさとのたひ衣わくる草葉も色かはるらし
十三日。尾張國おりつと申所を夜ふかくたち侍るとて。
夢路をも急ききにける旅なれや月に假ねの夜をおりつまて
あつたの宮を過侍るほどにかの社頭の鳥井の前にて。
神垣も光そふらしうこきなきよもきか嶋に君を待えて
なるみがたのほとり海づらにつゞきて野あり。これぞうへ野なるらむとおぼえ侍て。
あさ日さすなるみの上野鹽こえて露さへ共に干潟とそなる
又おもひつゞけ侍ける。
道の爲我思ふことのなるみ潟願ひみちくるしほせともかな
星崎と申所にて。今日は名月なり。空も心よく晴て。月もなをえ侍ぬとみえしかば。
ほし崎や熱田の方の空はれて月もけさよりなこそしらるれ
夜さむの里と申も此國と聞侍しかば。
よしさらは宿りとらしと旅衣よさむの里をよきてこそゆけ
さかひ川をみて。
それときくしるしはかりか堺川ほそき流れは名に流れても