Page:Gunshoruiju18.djvu/477

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奉るは。口のあればたゞにとなへゐたるか。耳のあればたゞに聞ゐたるか。あなあさましのやすさや。無始生死の間にちりの結緣つもりて泰山となる。露の功德たまりて蒼海とたゝへて。善根林をなし。機感時をえて。今生を生死の終りとし。當來を解脫のはじめとする人。此ときに生れて此緣にあひたり。故に慈父の長者は貧子どもの爲に福德の經を說て化一切衆生とこしらへ。みな皆令入佛道とよろこび。悲母の敎主はよはき子共のために誓願を發して此願不滿足と舌をのごひ。誓不成正覺と口をはく。こゝに知ぬ此南浮は西方の出門なりといふことを。道心はたとひかたからずとも。慙悔の箒をつかねて常に心を淸めん。然ば則さくら花えだにこもり。春の候を迎て開なんとす。佛種胸にうづもれ。終のときに臨て宜くきざすべし。抑これは羇中の景趣にあらず。存外のあさき狂言なり。然而魚にあらずば魚のこゝろをしるベからず。我にあらずば我心ざしを悟るベからず。駿蹄の千里にはするも。駑駘の咫尺に蹇くも。心ざしのゆくほどはいたる所たがはず。大鳳の雲にかけるをうらやみて。小鳥のまがきにあそぶばかりなり。此品家を出し始。道に入し時。身のあはれに催されて。人の嘲をかへり見ず。愚懷のためにこれを記す。他興のためにこれをかゝず。あざける人。あはれむ人。順逆のニ緣ともに一佛土に生れて。一切衆生をすくはんとなり。

 開くへき胸のはちすのたくひには春まつ花の枝にこもれる

 かはらしな濁るもすむも法の水ひとつ流とくみてしりなは