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Page:Gunshoruiju18.djvu/461

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婉轉たる雙娥は遠山の色。一たび咲ばもゝのこびなり。見きく人みなはらわたをたつ。此姬は先生に人として。翁にやしなはれたりけるが。天上にうまれて後は。宿世の恩を報ぜんとして。しばらく此おきなが竹に化生せるなり。あはれむべし父子のちぎりの他生にも變ぜざる事を。これよりして靑竹の世の中に黃金出來て。貧翁たちまちに富人となりにけり。其間英花の家。好色のみち。月卿ひかりをあらそひ。雲客色を重して。艷言をつくし。懇懷を抽て。つねにかくや姬が室屋に來會して。絃をしらべ歌を詠じてあそびたりける。されども翁姬難詞をむすびてうちとくるこゝろもなし。時のみかど此よしを聞しめしてめしけれども參らざりければ。みかど御狩あそびのよしにて。鶯姬が竹亭に御幸し給ひて。鴛のちぎりをむすび。松のよはひをひきたまふ。翁姬おもふところ有て。後日をちぎり申ければ。みかどむなしくかへり給ひぬ。かたへの天これを知て。玉のまくら。金の釵。たまきはまだ手なれざるさきに飛車くだりて天にあがりぬ。開城のかためも雲路にゑきなく。猛子がちからも飛行にはよしなし。時に秋の半。月のひかりくまなきころ。夜半のけしき風をとづれ。ものをおもはぬ人もものおもふおりふし。きみのおもひ臣の懷舊。おなじく袖をうるほす。彼雲をつなぐにつなぎ得ず。雲の色慘々としてくれのおもひふかし。風を追ともおはれず。風の聲颯々としてよるのうらみふかし。花民は奈木の孫枝なり。藥の君臣として萬民やまひをいやす。鶯姬は竹林の子葉なり。毒の化女として一人の 心をなやます。方士が大眞院をたづねし。貴妃がさゝめごと。二度唐帝のおもひにかへり。使臣の富士のみねにのぼり。仙女がわかれの書。