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Page:Gunshoruiju18.djvu/400

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え侍しよりなむ。冬の夜の雪ふれるよは思ひしられて。火をけなどをいだきても。かならずいでゐてなんみられ侍る。おまへたちもかならずさおぼすゆへ侍[らイ]むかし。さらば今宵よりはくらきやみのよのしぐれうちせんは。又心にしみ侍なんかし。齋宮の雪のよにおとるべき心ちもせずなどいひて。わかれに長久三年十二月八日丑時大內燒亡しのちは誰としられじとおも[ひイ]しを。又の年の八月に內へいらせ給に。夜もすがら殿上にて御あそびありけるに。長久四年七月廿三日兩宮入內御東南對一條院儀八月十日兩宮御退出この人のさぶらひけるもしらず。そのよはしもにあかして。ほそ殿のやりどをおしあけてみいだしたれば。あかつきがたの月のあるかなきかにおかしきを見るに。くつのこゑきこえて。ど經などする人も有。ど經の人はこのやりどぐちに立とまりて。ものなどいふにこたへ。これはふとおもひ出て。時雨のよこそかた時わすれずこひしく侍れと云に。ことながうこふべきほどならねば。

 何さまて思ひ出けん等閑の木の葉にかけし時雨はかりを

ともいひやらぬを。人々又きあへば。やがてすべりいりて。そのよさりまかでにしかば。もろともなりし人尋てかへししたりしなども後にぞきく。ありししぐれのやう同年十二月一日一條院燒亡ニ日遷御高陽院廿一日自高陽院遷御東三條ならんに。いかでびはのねのおぼゆるかぎりひきてきかせんとなんあるときくにゆかしくて。我もさるべき折をまつにさらになし。はるごろのどやかなるゆふつかた。まいりたなりときゝて。その夜もろともなりし人といざりいづるに。とに人々參り。うちにもれいのひとあれば。いでさいまかイていりぬ。あの人もさや思ひけん。しめやかなる夕暮をおしはかりて參りたりけるに。さはがしかりければ。まかづめり。

 かしまみてなるとの浦にこかれ出る心はえきや磯のあま人

とばかりにてやみにけり。あの人がらもいと