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Page:Gunshoruiju17.djvu/248

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心まどひイしたまはん物ぞと思ひて今迄すごし侍りつる也。さのみやはとて打出侍ぬるぞ。をのが身は此國の人にもあらず。月の宮古の人也。それをなんむかしのちぎりなりけるによりなむ。此世界にはまうできたりける。今は歸るべきに成にければ此月の十五日にかの國よりむかへに人々まうでこんず。さらばまかりぬべければ。おぼしなげかむが悲しき事を。此春より思ひなげき侍るなりと云ていみ敷なくを。翁こはなでうことの給ふぞ。竹の中よりみつけきこえたりしかど。なたねの大きさにおはせしを。わがたけ立ならぶまでやしなひ奉りたるわが子を何人かむかへきこえむ。まさにゆるさむやといひて。我こそしなめとて啼訇ること。いとたへがたげなり。かぐや姬の云。月の古の人にてちゝはゝあり。片時の間とてかの國よりまうでこしかども。かく此國にはあまたの年を經ぬるになむありける。かの國のちゝはゝのこともおぼえず。こゝにはかく久敷あそび聞えてならひ奉れり。いみじからむ心ちもせず。かなしくのみある。されどをのが心ならずまかりなんとするといひてもろともにいみじうなく。つかはるゝ人々も。年頃ならひて。たち別なむ事を。こゝろばへなどあてやかに美しかりける事をみならひて。こひしからん事の堪がたく。ゆ水のまれず。おなじ心になげかしがりけり。此事を御門聞食て。竹とりが家に御使つかはさせ給ふ。御使にたけとり出合てなく事限なし。此事をなげくに。髮も白くこしもかゞまり目もたゞれにけり。おきな今年は[八イ]十ばかりなりしかども。物思にはかた時になむ老になりにけるとみゆ。御使仰ごととて翁にいはく。いと心ぐるしく物思ふなるはまことにかと仰給ふ。竹取なく