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Page:Gunshoruiju17.djvu/227

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群書類從卷第三百九


物語部三

竹とりの翁物語

今はむかし。竹とりの翁といふものありけり。野にまじりて竹をとりつゝ萬の事につかひけり。名をばさるイきの宮つことなむいひける。其竹の中に本光る竹なむ一すぢ有けり。あやしがりて寄て見るに。つゝの中ひかりたり。それを見れば三寸ばかりなる人いとうつくしうてゐたり。翁云やう。我朝每夕每にみる竹の中におはするにてしりぬ。子になりたまふべき人なめりとて。手に打入て家へイもちて來ぬ。めの女にあづけてやしなはす。うつくしき事限なし。いとおさなければはこイ、籠に入てやしなふ。竹とりの[翁イ]竹をとるに。此子を見つけて後に竹とるに。ふしを隔て。よごとにこがねある竹を見つくる事かさなりぬ。かくておきなやうやうゆかたになり行。この兒やしなふほどにすくすくとおほきになり增る。三月計の內によきほどなる人になりぬれば。かみあげなどさ[たイ]じて。かみあげさせきす。ちやうのうちよりもいださず。いつきかしづきやしなふ。此兒のかたちのけさう[けうらイ]なる事よになく。屋のうちは闇き所なく光滿たり。翁心あしく候へし時も。此子をみればくるしき事もやみぬ。腹だたしくあることもなぐさみけり。翁竹をとる事久