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Page:Gunshoruiju17.djvu/155

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といひてやみにけり。男女あひはなれぬみやづかへになんいでたり一本ける。

昔男。津の國むばらのこほりあしやの里にしるよしありて。いきてすみけり。むかしのうたに。

 蘆のやの灘の鹽燒いとまなみつけの小櫛もさゝてきにけり

とよめるは。この里をよめるなり。こゝをなんあし屋のなだとはいひけり。此男なま宮づかへしければ。それをたより。ゑふのすけどもあつまりきにけり。この男のあにもゑふのかみなりけり。その家の海のほとりにあそびありきて。いざこの山のうへにありといふぬのびきのたき見にのぼらんといひて。のぼりてみるに。そのたき物よりことなり。たかさ廿丈ばかり。ひろさ五尺一本餘ばかりある石のおもてに。しろききぬにいしをつゝみたらんやうになん有ける。さる瀧のかみに。わらふだばかりにてさし出たるいしあり。その石のうへにはしりかゝる水。せうくり一本かうじばかりのおほきさにてこぼれおつ。そこなる人にうたよます。このゑふのかみまづよむ。

 我世をはけふかあすかとまつかひの淚の瀧といつれ勝れり

つぎにあるじよむ。

 ぬき亂る人こそ有らめ白玉のまなくもちるか袖のせはきに

とよめりければ。かたへの人わらふにや有けむ。この歌をよみてやみけり。かへりくるみちとをくて。うせにし宮內卿もとよしが家のまへすぐるに日くれぬ。やどりのかたを見やれば。あまのいさりする火おほくみるに。このあるじのおとこよむ。

 はるゝ夜の星か河邊の螢かも我すむかたの蜑の燒火か

とよみて。みなかへりきぬ。そのよみなみの風ふきて。なごりのなみいとたかし。つとめてその家のめのこどもいでて。うきみるの浪によ