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Page:Gunshoruiju17.djvu/146

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は。あはれがりてひとよねにけり。さてのちをさをさこねば。女おとこの家にいきて。かいま見けるを。男ほのかにま見て。

 百とせに一とせたらぬつくもかみ我をこふらし俤にたつ

といひて。馬にくらおかせていでたつけしきを見て。むばらからたちともしらずはしりまどひて。家にきてふせり。男この女のせしやうに。しのびてたてりて見ければ。女うちなきてぬとて。

 さむしろに衣片しきこよひもや戀しき人にあはてわかねん

とよみけるを。あはれとみてその夜はねにけり。世中のれいとして。思ひおもはぬ人有を。この人はそのけぢめ見せぬこゝろなんありける。

むかし男。女をみそかにかたらふわざもせざりければ。いづこなりけむ。あやしさによめる。

 吹風に我身をなさは玉すたれひま求めつゝいらましいるへき一本ものを

返し。女。

 とりとめぬ風にはあれと玉簾たかゆるさはか隙もとむへき

とてやみにけり。

昔。みかどの時めきつかはせ給ふ女。色ゆるされたる有けり。あほみやす所とていまそかりけるが御いとこなりけり。殿上につかはせ給ひける。ありはらなりける男。女がたゆるされたりければ。女のある所にいきて。むかひをりければ。女いとかたはなり。身もほろびなん。かくなせそといひければ。

 思ふには忍ふることそ負にける逢にしかへはさもあらはあれ

といひて。さうしにおりたまへば。いとゞさうしには。人の見るをもしのばでのぼりゐければ。此女思ひわびてさとへゆきければ。なにのよきこととおもひてゆきかよふに。みな人きゝてわらひけり。つとめてとのもとのもり一本づかさの見