このページは校正済みです
ねんごろにいひける人に。こよひあはんとちぎりたりけるに。この男きたりけり。この戶あけたまへと。たゝきければ。あけてなんうたをよみていだしたりける。
あら玉の年のみとせを待わひてたゝ今小宵社新枕すれ
といひいだしたりければ。おとこ。
梓弓まゆみ槻弓としをへて我せしかことうるはしみせよ
といひて。いなんとすれば。うらみて女。
あつさ弓ひけとひかねと昔より心はきみによりにしものを
といひけれど。男かへりにけり。女いとかなしうて。しりにたちてをひけれど。えをひつかで。し水のある所にふしにけり。そこなる岩に。をよびのちしてかきつけゝり。
あひ思はてかれぬる人をとゝめかね我身は今そ消果ぬめる
とかきて。いたづらになりにけり。
昔おとこありけり。あはじともいはざりける女の。さすがなりけるがもとにいひやりける。
秋のゝ
色ごのみなりける女。返し。
みるめなき我身を浦としられはや枯なて蜑の足たゆくくる
昔男。人のむすめのもとに一夜ばかりいきて。またもいかずなりにければ。女のおやはらだちて。手あらふ所に。ぬきすをとりてなげすてければ。たらひの水に。なくかげのみえけるを。みづから。
我はかり物思ふ人は又あらしと思へは水のしたに有けり
とよめりけるを。このこざりける おとこきゝて。
水口に我やみゆらん蛙さへ水の下にてもろこえになく
昔いろごのみなりける女。いでていにければ。いひがひなくて。男
なとてかくあふ
ニ條后の春宮のみやす所と申ける時の御かたの花の宴に。めしあげられたりけるに。肥後の