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Page:Bushido.pdf/281

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靈鳥フエニツクスの如くに生れ出づべしと。此豫言は吾人の望む所にして、又た其の全うせらるゝ日あらん。されど記すべし、靈鳥は唯だ自己の灰燼より生じて、候鳥にも非らず、又た他鳥の羽翼を借りて飛翔するものにも非ざることを。『神國は爾曹の中に在り』と。神國や、山高しと雖、轉落し來らず、海廣しと雖、帆走し來らず。哥蘭コーラン經に曰く、『神は輿國の民に與ふるに、各〻其國語を以て語るの豫言者を以てす』と。天國の種子の、其花を武士道に發きたるは、日本人の心念能く之を證し、又た能く之を知る。然るに悲しい哉、今や其果の未だ豐熟するに及ばずして、其日將に盡きんとす。而して吾人は左眄右顧、匇忙として、更に又た佳美、光輝、勢力、慰安を與ふべき他の源泉に馳すとも、未だ武士道に代ふべきもの