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第十三章 刀武士の魂

 刀の武士道に於けるや、威力剛勇の儀象なり。モハメツト宣言すらく、『劍は天堂地獄の鍵なり』と。而して此語は正に日本人の感想を反響せるものなり。士分の男兒は幼にして旣に劍を用ふることを學び、五歲に及べば、士服を着け、碁盤に乘り、其の弄びたる玩具の小刀を棄て、眞劍を佩びて、以て武士の分限を與へらるゝの大禮に會す。此の武門に入るアダプチオ、パル、アルマの第一禮旣に終はりたるの後は、小兒も、父の門を出づるに、縱令日常は銀塗の木刀を以て之に代ふと雖、なほ其身分に應じたる此の徽號を帶びざる無し。稍や長ずるや、