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Page:Bushido.pdf/198

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度たる敵討、即ち復讐も亦た之に美點あり、特長あるや否やを觀察せんとす。然るに此れと齊しき制度若くは習慣は、時代の異同こそあれ、凡ての民族間に行はれたるものにして、今日と雖、未だ全く廢弛せず。決鬪、私刑の形を以て歐米の國にすら、尙ほ存續するものなるを以て、此問題の如きは、予は僅かに數語を以て之を解明するを得べきものなるが如し。近く米國の一將校にして、ドレフユーの仇を報ぜんが爲、エスターヘジーに決鬪を挑みたるものさへありしに非らずや。結婚の行はれざる蕃族の間に在りては、奸淫は罪を構成せず、唯だ情夫の嫉妬のみ、よく女子を保護して、危害を蒙ること無きを得しむるが如く、刑事法廷の設備無き時代に在りては、殺戮は罪を成さず、唯だ被害者の緣戚が、戒