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物の見事に、腹切り了はんぬ。

 切腹を以て名譽の死となしたるは、自から多大なる誘惑の因素となりて、爰に無分別なる自殺者を生ずるに至りたり。毫も道義に合せず、又た死を値ひすること無き理由の故に、躁急なる若輩が、飛んで火に入る夏の蟲の如く、匇忙として死に就き、是非の曖昧なる動機よりして、武士の自から其命を殞するもの、修道院の門に馳する尼衆よりも多かりき。生命は廉に、即ち、世の定むる名譽の標凖より量るに、頗る廉なりき。されど甚だ悲しむべきは、其名譽てふものゝ、謂はゞ常に兩替步合の定まりたるものに非らずして、必ずしも正金ならず、却つて劣等の金屬を混和するものなりしことなりき。地獄の圈界中、かのダンテが、自殺の犧牲を幽