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Page:Bushido.pdf/154

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は、リア王に仕へしケントの如く、能く君に献替して納れられずとも、百方諫諍し、抂を矯め非を正して、上の謬を救ふにありき。而して尙ほ用ゐられざるに於ては君主をして唯だ其欲する所に任かすあらむのみ。されど武士たるもの其際、自から刄に伏し、血を濺いで、死諫の赤誠を表し、以て君主の良智良能に訴ふるは、盖し其常とする所なりき。

 生命は即ち以て君に盡すの器にして、人生の理想は名譽廉耻に在りき。故に武士の敎育は乃ち之を以て其凖據としたり。