このページは検証済みです
つかず。主運の末の悲しさを歎き悶ゆる折も折とて、器量賤しからぬ母親に連れられて、寺入賴む小兒あり。見るに﨟たき幼兒の、養君の御年恰好なり。幼君と幼臣、其面差の紛ふばかりなるは、母固より之を知り、子も亦た知れり。我家の奧に、人は知らず、幼兒の生命と、母が眞心との二つは、旣に祭壇に捧げられしなり。源藏は斯くとも思ひ寄らず、唯だ此子を以て其君を救はんとす。
爰に
つかず。主運の末の悲しさを歎き悶ゆる折も折とて、器量賤しからぬ母親に連れられて、寺入賴む小兒あり。見るに﨟たき幼兒の、養君の御年恰好なり。幼君と幼臣、其面差の紛ふばかりなるは、母固より之を知り、子も亦た知れり。我家の奧に、人は知らず、幼兒の生命と、母が眞心との二つは、旣に祭壇に捧げられしなり。源藏は斯くとも思ひ寄らず、唯だ此子を以て其君を救はんとす。
爰に