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Page:Bunmeigenryusosho1.djvu/146

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やすき事にて侍る、我申やうにし給ひて後、我に其半分をあたへ給はゞ、敎奉らんと云、鷲うけがふて其故をとふに、からす申やう、かたつぶりを高所よりおとし給はゞ、其から忽にくだけなんと云、則敎の樣にしければ、あんのごとくたやすく取て是をくふ、其ごとく、たとひ權門高家の人成共、我心をほしひまゝにせず、智者のおしへにしたがふべし、其故は鷲と烏をくらべんに、其德などかはまさるべき、なれ共かたつぶりのわざにおゐては、烏もつともこれをえたる、事にふれてことに人にとふべし、

第二十一 烏と狐の事

あるとき、狐ゑじきをもとめかねて、こゝかしこさまよふ處に、烏しゝむらをくはへて、木の上に居れり、狐心に思ふやう、我此しゝむらをとらまほしく覺えて、烏の居ける木の本に立より、いかに御邊、御身は萬の鳥の中に、すぐれてうつくしく見えさせおはします、然といへ共、少ことたり給はぬ事とては、御こゑのはなごゑにこそ侍れ、但此程世上に申しは、御こゑも事の外能わたらせ給ふなど申てこそ候へ、あはれ一ふしきかまほしうこそ侍れと申ければ、からす此儀を實とや心得て、さらばこゑを出さんとて、口をはだけゝるひまに、終にしゝむらを落しぬ、きつね是を取りて逃げ失ぬ、其ごとく、人いかにほむると云共、聊誠とおもふべからず、もし此ことを少もしんぜば、まんさ出來せんことうたがひなし、人のほめん時は、つゝしんでなをへりくだるべし、

第二十二 馬と犬との事

ある人、ゑのこをいといたはりけるにや、其主人外より歸りし時、彼ゑのこ其ひざにのぼり、むねに手をあげ、口のほとりをねぶりまはる、これによつて主人愛する事いやまし也、馬ほのかに、此よしを見て、うらやましくや思ひけん、天晴あつぱれわれもか樣にこそし侍らめと思ひ定めて、有時主人ほかより歸りける時、馬主人のむねに飛かゝり、顏をねぶり尾をふりなどしければ、主人これを見て、甚だいかりをなして、棒をおつ取て、本の馬やにをし入ける、其ごとく、人の親疎をわきまへず、我方より馳走がほこそ、甚以ておかしき事なれ、我ほどほどに從て、其挨拶をなすべし、

第二十三 しゝ王と鼠の事

あるとき、しゝ王前後も知らずふしまどろみける處