コンテンツにスキップ

Page:Bunmeigenryusosho1.djvu/137

提供:Wikisource
このページは校正済みです

をあなどる、然といへ共、親しき人にはかろく、柔にむかふべし、

六、妻女に常にいさめをなすべし、すべて女は邪路に入安いりやすく能道のうみちには入難し、

七、慳貪放逸のものに、ともなふ事なかれ、

八、惡人の威勢うらやむ事なかれ、いかんとなれば、上るものは終には下る物也、

九、我言葉を少くして、他人の語をきくべし、

十、つねに我口に、能道の轡をふくむべし、ことに酒えんの座につらなる時は、物いふことをつゝしむべし、故何となれば、酒宴の習、能詞を退けて、狂言綺語をもちゆる物也、

十一、能道を學する時、其憚をかへりみざれ、習をはれば君子と成物也、

十二、權威を以て人を從んよりは、しかじ、やはらかにして人になつかれ信ぜられよ、

十三、かくす事を女にしらすべからず、女は心はかなふして、外にかうじやすき物也、それに依て忽ち大事出來れる、

十四、汝乞食非人を賤しむる事勿れ、かへつて慈悲をおこさば、必ず天帝のたすけに預るべし、

十五、事の後に千萬悔よりは、しかじ、ことの先に千度案ぜよ、

十六、こゝらの人に敎化をなすことなかれ、まなこを愁るものゝためには、ひかりかへりて障りとなるがごとし、

十七、病を治するには藥を以てす、人の心曲れるを直すには、よきをしへを以てするなり、

十八、老者の異見をかろしむる事なかれ、老たるものは、その事わが身に絆されてなり、汝も年老いよわひ重なるにしたがひて、その事忽ち出來すべし、

第二 えじつとの帝王より不審返答の事

さるほどに、いそほかのはかりごとに工みけるは、きりほといふ大成鳥を四つ、生ながら取りて、其足に籠をゆいつけて、其中に童子一人づゝ入おき、其鳥の餌食をもたせ、ゑじきをあぐる時はまひあがり、さぐる時はとびさがるやうにして、此よしを奏聞すれば、御門大きに御感有、さらばとて、えじつとにいたりぬ、えじつとの人々、いそほが姿のおかしげなるをみて、笑ひあざけること限りなし、され共いそほ少しも