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Page:Bunmeigenryusosho1.djvu/130

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して後、終に羊を喰てけり、其國の王をほろぼさんとては、先忠臣を招物也と云て、終に勅使にぐせられて、りいひやの國にいたりぬ、

第十一 伊曾保りいひやの國へ行事

さる程にいそほ、りいひやの國に罷上り、勅使と共に參內す、みかど此よし叡覽有て、あやしの者のたいはいやな、かゝる見にくき者の下知によつて、さんのくにの者共、我命を背けるやと、逆鱗げきりん有事かろからず、すでにいそほが一命もあやうく見え侍りける、いそほ叡慮を察して言上しけるは、われに片時のいとまをたべと申ければ、暫とて御ゆるしをかうむる、その時いそほ申けるは、ある人いなごをとりて殺さんとてゆきけるに、道にて蟬をころさんとす、蟬うれひて云、われつみなくしていましめをかうぶる、人にさはりすることなし、夏山の葉がくれに、われすさまじきくせをあらはしぬれば、あつき日かげもわすれ井の慰ぐさみと成侍れ、かひなく命をはたされ給はんこと、なげきても猶あまりありと申ければ、實もとてたちまちゆるされたり、其ごとく、我姿かたちはおかしげに侍れ共、我が敎したがふ處は、國土平安にして、萬民すなほに富榮へて、善を專らにをしゆる者にてこそ侍れ、蟬とわれと、それたがはずと申ければ、みかど大きに叡感有て、さらばとて、勅勘をしやめんなされ、此上は汝が心に望むこと有ば、そう聞申せと仰ければ、いそほ謹んで申上るは、われにことなる望なし、われさんに年久敷ありて、下臈にて侍りけるを、所の人々申ゆるされ、獨身と罷成て心やすく侍りき、其恩を報がたく候へば、かの所より奉るべき物をゆるし給へかしと云ければ、みかど此よしえいかん有て、かれが望を達せん爲、さんの御調物を免されけり、

第十二 伊曾保りいひやに居所を作る事

いそほ、りいひやに居所をせしむ、其御赦免を報ぜんがために、一七日に此書をあつめ奉る、みかどえいらん有て、誠にふしぎの思ひをなし給へり、かゝる才人世に有まじとて、あまたの祿をくだされける、いそほ此たまものを舟につみ、さんへ二度下りける、さんの人々此よしをきゝて、いそほをむかへんとて、舟をかざり舞樂を奏して、海中の魚鱗もおどろくばかりさざめきあへり、去ほどに、いそほ程なくさんに付て、