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師隊を去ること二十步、一隊を隔つる每に一戰隊を立つ、前に進むには五十步を以て節となす。角の一聲諸隊皆散ず。立つこと十步の內に過ぎず、第四の角聲を聞き鎗を籠めて跪坐す、此に於て之れに鼓うち三たび呼び三たび擊ち、三十步、五十步に至つて以て敵の變を制す。馬軍はうしろより出づ、亦た五十步を以て時に臨んで節止す。正を前にし奇を後にし敵の如何を觀、再び之れを鼓うてば則ち奇を前にし正を後にし、復た敵の來たるをむかへて𨻶を伺つて虛をつ、此れ六花の大率おほむね、皆然り。」

 太宗曰く「曹公新書に曰く陣を作り敵に對するに、必ず先づ表を立て、兵を引いて表に就いて陣す。一部敵を受くるに餘部進み救はざる者は斬ると、此れ何の術ぞや。」靖曰く「敵に臨んで表を立つとは非なり、此れ但だ戰を敎ふる時の法のみ。古人善く兵を用ふる者は正を敎へて奇を敎へず、衆を驅ること群羊を驅るがごとし、之れと進み之れと退くく所を知らざるなり。曹公驕りて勝つことを好む、當時の諸將新書を奉ずる者敢て其の短を攻むるなし。且つ敵に臨んで表を立てば乃はち晚きこと無からんか、臣竊かに陛下の製する所の破陣の樂舞を觀るに、前に四表を出し後には旛をつらぬ、左右折旋して趨步金鼓各その節あり、此れ則ち八陣の圖四頭八尾の制なり。人まゝ但だ樂舞の盛なるを觀る、豈軍容の斯の如くなるを知ることあらんや。」太宗曰く「昔漢の高帝