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するなり。は、夏后氏はかしらくろうす、人の執なり。殷は白うす、天の義なり。周は黃にす、地の道なり。章は、夏后氏は日月を以てす、明をたつとぶなり。殷は虎を以てす、威を尙ぶなり。周は龍を以てす、文を尙ぶなり。師は多く威を務むるときは則ち民くつす、威少きときは則ち民勝たず、上民を使ふ其義を得ず、百姓其敍を得ず、技用其利を得ず、牛馬其任を得ず、有司之をしのぐ此れを威多しといふ、威多きときは則ち民くつす。上、德を尊ばずして詐慝さとくに任じ、道を尊ばずして勇力に任じ、命を用ふるを貴ばずして命を犯すことを貴び、善行を貴ばずして暴行を貴び、之が有司をしのぐ、此れを威少しといふ、威少なきときは則ち民勝たず、軍旅はのびらかなるを以て主となす、のびらかなるときは則ち民力足る、兵を交へ刄を致すと雖も徒はしらず、車馳せず、奔るを逐うて列を踰えず、是を以て軍旅の固めを亂らず、行列の政を失はず、人馬の力を絕たず、遲速誠命をあやまたず。

 古は國容軍に入らず軍容國に入らず、軍容國に入る時は則ち民德すたる、國容軍に入る時は則ち民德弱し。故に國に在る時は言文にして語溫に、朝に在ては恭以て遜、己を修めて以て人を待つ、召さゞれば至らず、問はざれば言はず、進み難く退き易し。軍に在つてはあげて立ち、行に在つては逐うて果す、介冑は拜せず、兵車はしきせず、城上ははしらず、危事には齒せず、故に禮と法とは