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 王覇の諸侯を治むる所以の者は、土地を以て諸侯にかたちし、政令を以て諸侯を平にし、禮信を以つて諸侯を親ませ、材力を以て諸侯を悅ばせ、謀人を以て諸侯をつなぎ、兵革を以て諸侯を服し、患を同うし利を同うし以て諸侯を合せ、小に比し大に事へ以て諸侯を和す。之を會して以て禁を發する者九、弱きをとつすくなきををかさば則ち之をつみし、賢を賊し民を害せば則ち之を伐ち、內をそこなひ外をしのがば則ち之を壇し、野荒れ民散ぜば則ち之を削り、固きをたのんで服せずば則ち之ををかし、其親を賊殺せば則ち之を正し、其君を放弑せば則ち之をそこなひ、令を犯し政をしのがば則ち之をふせぎ、內外亂れ禽獸行はるれば則ち之を滅す。


天子之義第二

 天子の義必ず法を天地に取つて先聖に觀る、士庶の義必ず父母に奉じて君長に正うす、故に明君ありと雖も士先づ敎へずば用ふべからざるなり。古の民を敎ふるや、必ず貴賤の倫經を立て相しのがざらしむ。德義相えず、材技相掩はず、勇力相犯さざらしむ。故にみち同うしてこゝろ和なり。古は國容軍に入らず、軍容國に入らず、故に德義相えず、かみほこらざるの士を貴ぶ。ほこらざるの士は上の器なり。いやしくも伐らずば則ちもとむるなし、求むるなくば則ち爭はず。國中のきくことは必ず其