Page:Bukyō shitisyo.pdf/49

提供:Wikisource
このページは検証済みです

奈何いかん。」起對へて曰く、「凡そ車を用ふる者陰濕には則ち停まり陽燥には則ち起こる、高きを貴びひくきを賤み、其强車を馳せ、若しくは進み若しくは止まり必ず其道に從へ、敵人てきじんし起こらば必ずそのあとを逐へ。」

 武侯問うて曰く、「暴寇卒かに來つて吾が田野を掠め、吾が牛羊を取らば則ち之れを如何。」起對へて曰く、「暴寇の來る必ず其つよきを慮れ、善く守つて應ずる勿れ。彼れ將に暮れ去らんとす、其裝必ず重く其心必ず恐れ、還り退いて速かなるを務め必ず屬せざるあり。追うて之れを擊たば其兵覆すべし。」

 吳子曰く、「凡そ敵を攻め城を圍むの道、城邑旣に破れて各〻其室に入り、其祿秩を御し、其器物を收め、軍の至る所其木をり其屋をあばき其ぞくを取り其六畜を殺し其積聚をくこと無れ。民に殘心無きを示せ。其の降を請ふことあらば許して之れを安んぜよ。」


勵士第六

 武侯問うて曰く、「刑を嚴にし賞を明かにせば以て勝つに足れりや。」起對へて曰く、「嚴明の事臣くす能はず、然りと雖も恃む所に非るなり。夫れ號を發し令を布き而して人聞かんことを樂