虞に備ふ。昔、齊の桓は、士五萬を募り以て諸侯に覇たり。晋の文は、前行たる四萬を召して以て其志を獲たり。秦の穆は、陷陣三萬を置て以て隣敵を服す。故に强國の君は必ず其民を料る、民膽勇氣力ある者聚めて一卒となし、以て進み戰ふを樂ひ力を效し以て其忠勇を顯はす者集めて一卒となし、能く高きを踰え遠きを超え、輕足善く走る者聚めて一卒となし、王臣位を失ひ功を上に見さんと欲する者聚めて一卒となし、城を棄て守を去て其醜を除かんと欲する者聚めて一卒となす、此の五者は軍の練銳なり。此の三千人あり、內より出でば以て圍を決すべし、外より入れば以て城を屠るべし。」
武侯問うて曰く、「願くは陣必ず定まり守必ず固く、戰必ず勝つの道を開かん。」起對へて曰く、「立ろに見んことを且た可なり、豈に直ちに聞かんや。君能く賢者をして上に居り不肖者をして下に處らしめば則ち陣已に定まらん、民其田宅に安んじ其有司を親まば則ち守已に固からん、百姓皆我君を是とし隣國を非とせば則ち戰已に勝たん。」
武侯嘗て事を謀る、群臣能く及ぶなし、朝を罷めて喜色あり。起進んで曰く、「昔、楚の莊王嘗て事を謀る、群臣能く及ぶなし、朝を罷めて憂ふる色あり。申公問うて曰く、君憂色あるは何ぞやと。曰く寡人之れを聞く、世聖を絕たず國賢に乏しからず、能く其師を得る者は王たり、能く