せるなり、鳥の集まる者は虛なり、夜呼ぶ者は恐るゝなり、軍擾るゝ者は將重からざるなり、旌旗動く者は亂るゝなり、吏怒る者は倦むなり、馬を殺して肉食する者は軍に粮なきなり、缶を懸けて其舍に返らざる者は窮寇なり、諄々々徐かに人と言ふ者は衆を失へるなり、數〻賞する者は窘めるなり、數〻罰する者は困しむなり、先きに暴にして後に其衆を畏るゝ者は精しからざるの至りなり、來つて委謝する者は休息せんと欲するなり、兵怒つて相迎へ久うして合せず、また相去らざる者は、必ず謹んで之れを察せよ。
兵は益〻多きを貴むに非ざるなり、武く進むこと無しと雖も、以て力を併するに足れるは、敵を料つて人を取るのみ、夫れ惟だ慮なくして敵を易んずる者は、必ず人に擒にせらる。卒未だ親附せざるに之れを罰すれば則ち服せず、服せざれば則ち用ひ難し、卒已に親附するも罰行はれずば則ち用ふべからざるなり。故に之れを令するに文を以てし、之れを齊うするに武を以てす、是れを必取といふ。令素より行はれ以て其民を敎ふれば民服す、令素より行はれずして以て其民を敎ふるときは則ち民服せず、令素より行はるゝ者は衆と相得るなり。