を屈する者は害を以てし、諸侯を役する者は業を以てし、諸侯を趁らしむる者は利を以てす。故に兵を用ふるの法、其來たらざるを恃むなかれ、吾が以て之れを待つ有るを恃め。其の攻めざるを恃むなかれ、吾が以て攻む可らざる所あるを恃め。故に將に五危あり、必死は殺すべし、必生は虜にすべし、忿速なるは侮るべし、廉潔なるは辱むべし、民を愛するは煩はすべし。凡そ此の五つの者は將の過なり、兵を用ふるの灾なり、軍を覆へし將を殺すは必ず五危を以てす、察せずんばあるべからざるなり。
孫子曰く、凡そ軍に處て敵を相るに、山を絕ち谷に依り、生を視て高きに處れ、隆きに戰うて登ることなかれ、是れ山に處るの軍なり。水を絕てば必ず水に遠ざかれ。客、水を絕つて來るときは之れを水內に迎ふるなかれ、半ば渡らしめて之れを擊てば利あり。戰はんと欲する者は水に附いて客を迎ふるなかれ、生を視て高きに處り水流を迎ふることなかれ、此れ水上に處るの軍なり。斥澤を絕たるには惟だ亟かに去つて留まるなかれ、若し軍を斥澤の中に交ふれば、必ず水草に依つて衆樹を背にせよ、此れ斥澤に居るの軍なり。平陸には易に處り、高きを右背にし、死を