Page:Arai hakuseki zenshu 4.djvu/828

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にあづかるべき、其十誡といふもの、また佛氏の說によりて、たゞその他犯の戒を、二條にわかち出す、今其說をとふに、我敎化之主より始て、凡其徒弟たるものゝごときは、ことく皆女子に近く事をもゆるさず、其他尊貴の人といヘども、一妻の外に、他犯の事ある事なし、此故は、夫婦相和がざるは、必ず其邪淫による、世間父ありて、其生母の故に、其子をにくむあり、子ありて、其生母の故に、父を怨むるあり、其母を同じくするものは相愛し、其母を異にするものは相にくむ、父子兄弟相和らがざるも、もとゝして他犯による、これによりて、其禁特に重しといふ、又古より以來、彼方諸國戰亂の事をきくに、皆これ其嗣絕ふるが故によれりといふ、其流弊のこゝに至れるも、またあはれむべし、ヱイズス降生之初、種々瑞應あり、自らデウスと稱せしといふの類、釋迦文生れて種々瑞應を現じ、自ら稱して天中天といひし事のごとく、其磔殺されし後に蘇生して、其母にみえしといふの類、小瞿曇賊せられ、木その身を貫き、立てゝ以て標となす、大瞿曇その血をとりて、人となせしといひし事のごとく、シルウエステル聖水を以て、國君の頂に灌しは、大梵天王、四大海水を以て、其太子の頂上に灌ぎし事のごとく、其君ローマンを施入して、精舍を建てしといふ類は、缾沙王、迦蘭陀竹園を施して、僧伽藍摩となせし事のごとく、すべてこれらの說、番語ことくに通曉すべからずといヘども、大約その敎の由來る所、西天浮圖の說に出づ、陰かに其粃糠を竊むの說、鐘子が言ひし所、また我を欺かず、卽今其說によりて、ヲヽランド鏤板の地圖に據るにそのデウス降生の地ジユデヨラのごときは、西印度の地方を相去る事遠からず、又其說に、ヱイズス未だ生れざる以前、ジユデヨラのみ、デウスの敎ある事をしる、其他はことく皆佛敎を尊信したりといふ、さらば、西天浮圖の說、其地方に行はれし事、ヱイズスが法のさきにあり、今ヱイズスが法をきくに、造像あり、受戒あり、灌頂あり、誦經あり、念珠あり、天堂地獄輪廻報應の說ある事、佛氏の言に相似ずといふ事なく、其淺陋の甚しきに至りては、同日の論とはなすべからず、明季の人、其國の滅びし故を論ぜしに、天主の敎法、其一つに居