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Page:Arai hakuseki zenshu 4.djvu/817

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らずといふ、

イスパニヤ、フランスヤのごとき、海外の國を倂せ得て、國を開きし事を問ふに、たとへば、ノーワイスパニヤのごときは、初其國を治むるものもなく、其人こゝかしこむらがり聚りて相爭ひ、弱きは、强きが肉となりて、人の屍を相食ふに至れり、イスパニヤ人、風のために放されて、こゝに至りて、其衣食の業ををしへ、資財の用を通じて、みちびくにデウスの敎を以てす、此方の人、始て其生養の道を得て、相悅び服し、つゐに其地を納れて、本國の君の治めむ事を望請ひぬ、ロクソンのごときも、俗皆裸體にして、わづかに樹皮を以て、前後を遮る、其人また禽獸に相遠からず、イスパニヤ人、こゝに至るに及びて、其生養の道を得るのみにあらず、我敎ある事をもしりぬ、國人擧りて、本國に內屬せむ事を望請ふ、或人諫て、相去る事萬里にして、彼國を治めむ事、我財用もまた給ぐべからず、棄てむにはしかじといふ、本國の君、海外の人をして、いきてその生を安くし、死してこの苦をまぬかれしめんには、我デウスの恩に報ふる所、すくなからじといひて、つゐに其請ふ所をゆるされき、此餘、ゴア、アマカワのごときは、其地を借て、海舶互市の事に便する所也、すべて其國を侵し奪ひしなどいふ事にはあらずといふ、〈ノーワイスパニヤ、ロクソン、皆國名、ゴアは、インデヤの地名、アマカワは、阿瑪港、廣東にあり、皆前に詳也〉

我國、東にサカりて最小しき也、また我に大禁ある事をば、凡そヱウロパ地方の人にありて、ことくしれる所也、今はた何のもとめありて、此所には來りぬらむ、心得られずととふに、まづ此國の東に僻りて、かつ小しき也と、のたまふ事しかるべからず、凡其國を論ぜむに、其地の小大、其方の近遠を以てする事、あるべからず、萬國の中、其土壤廣く大きなるは、タルターリヤ、トルカにしくものなし、されど其人のごとき、禽獸にだにもしかざるべし、ヱウロバ諸國の人のごときも、もし我敎化によるにあらざらむには、またタルターリヤ、トルカに異なるべからず、我ローマンのごときは、方僅に十八里にはすぎず、されど、我道のある所なれば、西南諸國尊び敬はずといふ所なし、これを頭の小しきなるが、四體の上にあるにたとふべし、また試に物を觀るに、其始皆善ならずといふ事なし、天地の氣、歲日の運、萬物の生、ことく皆東方より始らずといふ事なく、萬國の中、東方に國せ