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木ずゑには白磁の叡智ながれたりみ冬八旬地はきしみつつ


盲点に墜ちてはつもる揚羽の蝶日ごとにわれを狂人きちがひにする


石の間にうろこの匂ひ青みきてどくだみ草もよみがへるなり


日にみだすコリーの毛並口笛は窗にかげろひヒヤシンスは黄に


ガラス窗たかくかげろひ三月の酸ゆき果実このみは天に盈ちくる



 春冷


ひとしきり野をかけめぐる錆びた手は日の窗かけの陰に絞られ


海にくれば小鯛もあをしわが肉の刺ことごとくぬけさるあした


海鳥はいまだ遊ばず朝潟にねむる小蛸は人にとられぬ


横這蟹よこばひあをさの陰に逃げながらまぎれもあらぬ朝のまがごと