アイヌの工藝は甚だ幼稚なり、金屬を製鍊して器具を作ることを知らず、故に其の今日まで使用する金屬製器具は皆和人より輸入せられたるものなり。漆器、陶器の如きも亦然り。
其の自ら製する器具の主もなるものは、木臼及び杵・柄杓・木鉢・木盆・匙子・髭揚(イクパシュイ)・自在鍵・煙草入・糸卷・小刀の鞘・機を織る器具・キナ莚・草を編みて作りたるサラネップ・繩等なり。船は丸木を刳りて丸木船を造る、至つて手輕なるものにて動搖し易し。弓はオンコの樹にて製し、矢にはブシ毒を塗る、ブシ毒は「トリカブト」の根を原料とし、之を製するに秘傳あり。
女子のアツシ織は最も巧妙なるものにて、其の器具もオサ其の他數種を使用す。之れを織りつゝある有樣は、繪葉書にも數多あ