起りたる原因、病の與へしは何物なるかを、夢幻の姿にて述ぶ。「ツスグル」は自失の姿に陷りたれば、如何なる事柄を語り出づるか、自身も之を知らず、是れ其の語るは彼に非らずして彼乘移れる者(祖先・狼・狐・熊・鳥類等)之れを語ればなり。此の時「ツスグル」は恐ろしき容態にて息使ひ荒く玉なす汗に額を濡し、總身戰慄して、眼は開くも物を見ることなし。蓋し心に物を見るが故なり。此の間、男子は嚴肅に坐して、祈禱に餘念なし。其の光景は、何にも譬ふること能はざる莊嚴なるものなり。
(五)事變又は變死等の場合に於ける「カムイウエキミムセ」