刺戟に依り、獸類・魚類の棲む個所の方向を知り、之れを便りて獵に出かけるなり。これのみならず、珍らしき來客も「ノイボロクス」によりて豫め知ることを得べし。筆者若年の頃「ノイボロクス」の名人の言ふことの一々適中するを見て、不可思議なるに感じたり。現今にても、獵人等は之れを重んじ、其の名人に問ひ合せ、又自ら爲して働きを敏活にするに努む。
「オハインカラ」(〈オハは空、インカラは見る〉)は、蜃氣樓の事なるべし。神かアイヌに事の善惡を通ぜんため、物體を示すなりといふ。平坦なる野に、山――川など顯はれて、行手を塞ぐことあり。斯る場合は必ず引返さゞるべからず、若し、强て之れを通り拔くるときは、神の御敎に