或る時、例によつて、美味しい御馳走を椀に山々と盛り、アイヌに御馳走すべく、アイヌ部落に御出なさつて、最も貧しい家に參り、入口より差出されたのであつた。此の家の主人は、なまけ者で、貧乏する位であつたから、心もよくない者で、此の裸體の神を見たいと云ふ惡い心を起し、椀を取らずに其の手首を取つて、家の中へ無理に引き入れた。神樣は驚き、且つ恥ぢて言ふ樣、「アイヌは我れに恥を與へたり。今後アイヌ種族は雪の融けて無くなるが如くに自ら滅亡せん」と言ひ殘して、何處へか、打ち揃つて去つた。誠に困るのは、前後の辨へもない「シルンクル」(貧乏人といふ事なるが、惡い者の意)である。
「コロボックンクル」に就いての傳說は右の如くなるも、其の實在