せし人種(じんしゆ)なるや否(いな)やは頗(すこぶ)る疑(うたが)ふべし。果(はた)して此(こ)の人種(じんしゆ)ありて何處(いづく)へか移(うつ)り去(さ)りたるものとすれば、今(いま)尙(な)ほ其(そ)の子孫(しそん)の存在(そんざい)すべき筈(はず)なるに、絕(た)えて斯(かゝ)る人種(じんしゆ)あるを聞(き)かず。是等(これら)に就(つ)きては旣(すで)に學者(がくしや)の硏究(けんきう)を經(へ)て發表(はつぺう)せられたるものなれば、後進(こうしん)の筆者(ひつしや)は筆(ふで)を此處(こゝ)に止(とゞ)むべし。
(四)「アイヌ」種族の現今
「アイヌ」族(ぞく)は、天然物(てんねんぶつ)のみを友(とも)とせる昔時(むかし)は、外部(ぐわいぶ)より何等(なんら)の刺戟(しげき)を與(あた)へられず、安全(あんぜん)無事(ぶじ)の生活(せいくわつ)を爲(な)せしものにして、人口(じんこう)も、亦(また)多(おほ)かりき。
開(ひら)くる御代(みよ)となりて優等人種(いうとうじんしゆ)と接觸(せつしよく)すること頻繁(ひんぱん)なるに從(したが)ひ、