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睨み合はせて行き、これを經營狀況の管理用具󠄁として能率󠄁の增進󠄁に心懸くべきである。斯やうにして原價計算を通󠄁して經營が合理化󠄁されると生產力は見事に增强され、また原價はそれに超比例的に低減されて行くべきである。

 第二の價格政策の決定に就ては、斯うである。卽ち原價が正確に計算されて、こゝに始めて價格政策が定め得られるのである。そのことは自由主義經濟時代でも勿論さうである。元來原價計算は、この價格政策の決定の基礎として尊󠄁重されて來た。だが自由主義經濟では、原價計算が價格政策の基礎として働くのは一事業の價格政策に就てだけである。然し統制經濟に於ける統制價格も原價計算を基礎とせねばならぬ。御承知の如く我國では戰時物價の適󠄁正化󠄁を圖るため卽ち戰時適󠄁正價格形成のために、その基礎を原價計算に置くことにした。これ原價計算性格の一大轉換であつて原價計算が一事業の價格政策から一國の價格政策の基礎として働くことは原價計算に國家的性格を與へたものであり、戰時經濟に於ける原價計算の重點と特色は、まさにこゝにあるといつて差支へない。

 偖て原價計算が戰時の適󠄁正價格形成に大きな役割󠄀を果さねばならぬこと前󠄁述󠄁の通󠄁りであるが、最近󠄁この點を特に國民に强調󠄁したのは十六年八月󠄁十三日に發表された物價對策審議會第二囘總會で決定した物價基本方策である。卽ちその基本方策の一つとして低物價堅持と生產力增强との調󠄁整を目

第一章 總論